2030年のキャリア戦略 ~人生100年時代を幸せに生き抜くために~
人生100年時代と言われる今、年齢に関係なくキャリアの悩みは尽きないはず。 「こんなキャリアの歩み方もあるのか!」という新しい気付きを提供します! <山岸慎司 経歴> 三菱化学において新規事業分野の開発研究・企画マーケティングに従事。米国系経営戦略コンサルティング会社のアーサー・D・リトルに転じ、主に製造業の販売マーケティング戦略策定、新規事業戦略策定、組織改革、人材育成戦略策定など多数のプロジェクトに参画。その後、複数の外資系日本法人において、経営企画室長、マーケティング本部長、執行役員事業部長、代表取締役社長などのマネジメントポジションを歴任。現在は国家資格キャリアコンサルタントとして、ビジネスパーソンのキャリア開発と人材育成に従事。東京大学農学系修士、ロンドン大学インペリアル校経営管理学修士(MBA)課程修了 <著書> 『40歳からの実践的キャリアデザイン』 https://amzn.to/3uvkfud 『16歳の仕事塾』 https://amzn.to/3uqattp 『成功する就活の教科書』https://www.amazon.co.jp/dp/4502494216
182.新聞を読むメリット(2)新事業のタネを見つける
新聞には、新しい事業のヒントがたくさんあります。AIが発達すると、ヒトとしての発想力、課題発見力、企画力などがこれまで以上に大切になります。新聞を読むことで、これらの能力を高めることができます。
社会には「身近な困りごと」と「世の中の困りごと」があります。新聞を読むことで社会ニーズに気づき、事業アイデアを着想できます。アイデアを出すには生成AIの助けを借りてもよいですが、まず自分の頭で着想し、それを広げるために生成AIを使い、また自分で考えて絞り込み、さらによい提案にするためにAIの助けを借りるといったプロセスを経るとよいでしょう。
181.新聞を読むメリット(1)メディア・リテラシーを高める
最近、新聞発行部数が、ピーク時から激減しています。大手5紙では、電子版への移行がうまくいった日経新聞以外は、売上減少が加速しています。しかし、新聞はテレビやインターネット上の情報より、正確性、網羅性、俯瞰性、多様性に優れています。今回は、新聞を読むことでメディア・リテラシーを高めることのメリットを考えます。
メディア・リテラシーとは、メディアの記事やニュースに対し、「健全な懐疑心」を持つことです。この力が弱いと、誤情報・デマの拡散、SNSトラブル、詐欺被害、情報の偏りといったリスクが高まります。ネット情報に加え、複数の新聞を読むことで、この力を鍛えられます。
180.“手に職”の時代:ブルーカラー・ビリオネアとは
米国では、建設、設備工事、修理などの現場作業(ブルーカラー)で専門技能が高い人の収入が上がっています。事業をうまく拡大して、巨額の富を築く人も出てきているそうで、ブルーカラー・ビリオネア(億万長者)と言われます。
背景としては、現場仕事の深刻な人材不足、特に高度技能者の稀少化があります。日本でもホワイトカラー(事務職)の仕事はAIに代替され、2030年代には430万人の事務職が余り、技能職は大幅に不足するとの試算もあります。事務系ホワイトカラーになるよりも、手に職をつける方が、高収入が見込める時代になるのかもしれません。稼げる仕事領域としては、建設・設備、製造、物流、医療、植栽管理などが挙げられます。
179.多文化社会で働く(2)国際的な仕事をするには
日本で国際的な仕事をするには、5つの領域があります。1つめは、海外展開している日本企業の国際業務です。営業・マーケティング、輸出入、海外拠点の支援業務などがあります。海外売上比率が高い業界としては、自動車、エレクトロニクス、機械などのメーカーや商社などが挙げられます。
2つめは、外資系企業の日本法人です。外資系企業は日本国内向けの営業・マーケティングが中心なので、海外勤務の機会は、実は多くはありません。3つめは、留学生や外国人労働者を支援する仕事です。日本語教師、留学生支援、外国人向け人材サービス業などが挙げられます。
4つめは、公的機関です。大使館、国際公務員、国際的なNGOなどが代表的です。最後の5つめは、インバウンド観光客向けの仕事です。旅行・宿泊・観光施設・通訳ガイドなどが考えられます。
178. 多文化社会で働く(1)グローバルリーダーシップとは
6月に書籍『キャリア・アントラージュ 社会で役立つスポーツ選手の育て方』(田中研之輔、山岸慎司の共著)を刊行しました。本番組でもスポーツ選手のキャリア形成について、ときどき発信していますが、ご興味あれば手に取っていただければと思います。
さて今回は、前月の「異文化理解を高める」の続きで、「多文化社会で働くためのリーダーシップ」について考えます。グローバル社会でのリーダーシップとは、単に英語コミュニケーション力ではなく、「多様な人々をつなげる力」です。
さまざまなタイプのリーダーシップがあり、必ずしも「強いリーダー」である必要はありません。多文化間では、言葉に出して説明し、多様な価値観を調整して、チームとして結果を出すことがリーダーに求められます。
177.異文化理解力を高める(4)英語力と異文化適応のU字カーブ
異文化対応では、多くの場合、英語でのコミュニケーション力が必要です。英語力の指標としては、TOEICが広く使われています。例えば、大手企業が新卒大学生に期待するのはTOEIC600点です。これは足切り点なので、海外関連の仕事をしたい人は700点以上が必要です。若いうちに英語力を身につけられると、キャリアの選択肢を広げられます。
また、新しい文化環境に入った人の心理状態は、①ハネムーン期、②カルチャーショック期、③回復期、④安定期のように変化すると言われます。もし職場で、カルチャーショックを受けていそうな外国人がいたら、あなたはどのように対応するでしょうか。
176.異文化理解力を高める(3)異文化適応能力(CQ)とは
異文化に適応する能力をCultural Intelligence Quotient(社会的知能指数、CQ)と言います。メタ認知CQ、認知CQ、動機CQ、行動CQの4つの要素から構成されます。CQは、知識だけでなく、意欲や行動まで含む総合的な能力で、経験と振り返りによって高められる点が重要です。3つのケースワークを通じて、CQを理解していきます。
また、異なる文化による違いを、単に妥協して調整するのではなく、違いを活かして新しい価値を生み出すことを「異文化シナジー(相乗効果)」と言います。多様性に富んだチームは、同質的なチームよりも生産性が向上するという研究が多くあります。仕事においては、多様性を活かし、より良い成果を目指したいものです。
175.異文化理解力を高める(2)日本はハイコンテクスト文化
文化には、「見える文化」と「見えない文化」があります。氷山の海面上と海面下のイメージで、見えない部分の方が大きいものです。日本の例では、富士山、寿司、着物、アニメなどが見える文化です。社会マナー、本音と建前、接客の精神などが見えない文化です。相手の文化には見えない部分があることを理解し、見える部分だけで判断しないことが大切です。
また、日本やアジアの国は「ハイコンテクスト(高文脈)文化」と言われ、はっきりと言語化することが少なく、お互いの空気を読む文化です。その反対に、アメリカ、オーストラリアなどは「ローコンテクスト(低文脈)文化」と言われ、言葉で伝える文化です。多文化間では、明確に言語化する「ローコンテクスト」を心がける必要があります。
174.異文化理解力を高める(1)内なる国際化の進展
6月はグローバル化に対応するための「異文化理解力」について考えます。近年、日本国内でも、外国人との接点が急増しています。あらゆる仕事において、異文化を理解した上で業務を進めるスキルを高める必要があります。
今回は日本国内の国際化の進展を確認します。留学生は、過去10年で約2倍の33万人になりました。外国人労働者は同時期に2倍以上増え、230万人です。訪日外国人観光客はなんと4000万人を突破しました。いずれも、今後さらに増加の見込みです。
特に観光では、世界の観光魅力度調査で、日本が常に上位になっています。自然が豊かで、食事がおいしく、安全であるといった日本の良さが認められています。あなたは「日本はどういう国か」「日本人の特徴は何か」と聞かれたとき、どのように答えるでしょうか。
173.東南アジアに学ぶ(4)豊かで幸せな国ブルネイ
ブルネイは、石油や天然ガスを産出し、世界で最も豊かな国の一つと言われます。王様(スルタン)が統治する敬虔なイスラム国家です。一人当たりGDPは日本と同レベルの先進国で、所属税がほとんど無く、医療や教育も無料です。
イスラム国家の特徴として、国内でのアルコール販売はできません。また、一夫多妻制度も認められています。観光にも力を入れており、水上都市のボートツアーや熱帯林のエコツーリズムの人気があります。暑い国で経済的に豊かなので、みんながのんびりしていて、生活に余裕がありそうです。
172.東南アジアに学ぶ(3)マレーシアの経済と社会
マレーシアは東南アジアでは人口が多い国ではないため、戦略的に差別化を図っています。「ルック・イースト戦略」では、主に日本企業の労働倫理(勤勉さ、時間厳守)や組織文化(チームワーク、長期雇用、改善活動)を導入し、工業化に成功しました。
また、2010年に「アジアの教育ハブになる」戦略を打ち出し、インターナショナルスクールを大幅に増やし、日本を含む世界各国から留学生を呼び込んでいます。私の知人が経営するスクールの教育方針は、少人数クラスで個性を伸ばすという、現代のニーズに合致したものです。
171.東南アジアに学ぶ(2)マレーシアの多文化共生
マレーシアは、1963年に英国から独立してから急速に経済発展し、一人当たりGDPで12,000ドルという先進国レベルまで到達しました。英国統治下では、スズ鉱山と農業プランテーション(天然ゴム、油ヤシ)が主産業の発展途上国でした。
しかし独立後は、マハティール首相の「ルック・イースト(東アジアに学べ)戦略」でエレクトロニクスや自動車などの産業誘致に成功し、製造業が成長をけん引しました。また、マレー系70%、中華系23%、インド系7%という多民族・多宗教の国家が、うまく多文化共生することで、安定した社会を形成しています。
170.東南アジアに学ぶ(1)シンガポールの国家戦略
5月は「多文化社会のあり方」について、シンガポール、マレーシア、ブルネイから日本が学べそうなことをお話します。シンガポールは、建国の父といわれるリー・クワンユー首相の強いリーダーシップによる巧みな国家戦略で発展を遂げました。
リー首相は、多様性のある社会の秩序を維持するには、厳格な法治主義と実力主義が必要であると考えました。法治主義については、ルールを明確にして、違反したら罰金をとることで、規律を維持しています。例えば、道にゴミを捨てると8万円以下の罰金です。
また、実力主義により、汚職防止や女性活躍も実現しています。シンガポールでは働く女性が、フィリピン人の住み込みメイドを雇用することも一般的です。
169.GWに一人合宿をしよう(3)変幻自在のプロティアンキャリアとは
現代のキャリアは、組織によってではなく、個人によって形成されます。今回は、ダグラス・ホール先生が2002年に提唱し、日本では法政大学の田中研之輔教授が広めている「プロティアンキャリア」についてご紹介します。
これまでのキャリアは、組織が主体で、組織内でのコミットメントや昇進を中心に論じられてきました。プロティアンキャリアは、個人が主体で、個人の仕事への満足感や心理的成功がゴールです。組織から自立し、社会や自分の変化に合わせて、柔軟に変化し続けることが人生を豊かにするという考え方です。そのためには、ビジネス資本、社会関係資本、経済資本の3つについて、棚卸しをして、5年後、10年後に向けて、どうしていきたいかを考える必要があります。
168.GWに一人合宿をしよう(2)偶然のチャンスをとらえるには
キャリアは偶然の出会いによって、大きく変わります。皆さんもこれまでを振り返ると、先生、友人、先輩、上司などとの「良い出会い」が、自分を良い方向に導いてくれたことを思い出すかもしれません。今回は、偶然のチャンスを取り込み、キャリアをよいものにしていく心構えとワークについて、ご紹介します。
スタンフォード大学のJ・クランボルツ先生は、1999年に「計画的偶発性理論」を発表しました。現代のキャリアは、偶然をうまく取り込むことが大切で、そのためには、「好奇心、持続性、柔軟性、楽観性、冒険心」の5つが必要です。
これまでの人生で印象に残る偶然の出来事を思い出し、その出来事の前後の自分の行動を思い出してみましょう。また今後、どんな人と出会いたいか、そのためにはどんな方法がありそうかを考えてみましょう。
167.GWに一人合宿をしよう(1)キャリアアンカーを考える
もうすぐGWを迎えます。この機会に、少しまとまった時間をとり、自分のキャリアを振り返り、将来のキャリアを考える「一人合宿」をお勧めします。自宅やカフェでもよいですが、できれば1泊2日くらいで海か山に行ってみるのもよいと思います。今回から3回に分けて、キャリアを考えるフレームワークをご紹介します。
自分のキャリアを振り返るには、多少の準備が必要です。例えば、過去の手帳、アルバム、もらった名刺、自分のSNSなどが参考になります。そして、過去のモチベーションの変化を「ライフラインチャート」でまとめてみることで、多くのヒントを得られます。また、自分の「キャリアアンカー」が年齢の変化によって重みが変わっていくこともあるかもしれません。
166.大学はどうなるべきか(2)Jリーグに学ぶには?
日本の大学は秋入学に移行する方がよいが、なかなか難しい現状があります。一方、サッカーJリーグは、長年の課題であった秋春制に移行するため、2026年は変則的な半年のリーグを開催しています。今回は、どうしてJリーグがこの変革を可能にしたのかを考えます。
サッカーの欧州リーグは、8月後半に始まり、6月に終わります。日本のJリーグは、2月から12月に開催されるため、選手や監督・コーチの移籍の難しさは以前から問題でした。しかし、サッカーは、「国際競争力を高めて、世界一を目指す」という目標を共有することで、多くの関係者の合意を得ることに成功しました。
大学の場合、関係者が非常に多いため、サッカーよりはるかに調整がたいへんですが、日本の科学技術力を高めるためには、何らかの制度変更が必要だと思います。
165.大学はどうなるべきか(1)なぜ4月に始まるのか?
日本の学校は4月に始まります。これは世界では珍しいシステムです。日本以外のほとんどの国では、小学校から大学まで、秋に始まるのが普通です。私は東京大学で、海外に行きたい日本人学生や、日本で就職したい留学生の就職支援をしています。今回は、4月始まりの学校制度の課題についてまとめてみます。
日本の大学は、世界におけるランキング(英国のTHE)で、100位以内に入っているのは、東大と京大の2校しかありません。中国は10校近く、韓国は4校、他にもシンガポール、インドなどのアジアの大学が100以内に多く入り、順位を上げています。大学ランキングは、その国の科学技術の人材育成レベルにつながります。4月入学の制度は、海外との人的交流や共同研究などに不利になっているのです。
164.スポーツ選手のキャリアを考える(4)フェンシングはなぜ強くなったのか
フェンシングは日本では競技人口が7000人しかいない競技です。しかし、2008年北京五輪で太田雄貴選手が銀メダルを獲得して以来、2024年のパリ五輪では5つのメダルを獲得するまでに強くなりました。
日本フェンシング協会は、太田雄貴氏が会長となり、「アスリート・フューチャー・ファースト」という理念を掲げています。これは太田会長の「メダルを獲得すれば、人生が大きく変わると思っていたが、そうではなかった」という体験がベースです。「勝利至上主義」から脱し、長期的な人生設計を考えることが競技強化にもつながるという価値観の転換です。
具体的には、日本代表チームに入るには、英語テストで外国人コーチとコミュニケーションできるレベルの得点を取る必要があります。また、自分でスポンサー企業を探す活動も支援しています。
163.スポーツ選手のキャリアを考える(3)Jリーグ・水戸ホーリーホックの取り組み
Jリーグの平均引退年齢は26歳の若さです。子ども時代からサッカー一筋の場合、「サッカーをやめた自分には何の価値もない」と感じ、深刻なアイデンティティ・クライシス(自己喪失)に直面するケースもあります。Jリーグは2000年代初めから、引退後キャリア支援の必要性を意識してきました。
水戸ホーリーホックは、J2が長く、2026年に初めてJ1に昇格したチームです。大企業の支援が弱く資金が少ないため、限られた人材を育てることに注力し、「人材育成の水戸」として知られます。2018年からは、西村卓朗GMが自分の経験をもとに「Make Value Project」という独自の人材育成プログラムを立ち上げました。自己分析を促し、視野を広げる支援が中心です。今回はこの取り組みについて紹介します。
162.スポーツ選手のキャリアを考える(2)UNIVASの取り組み
2019年にスポーツ庁の旗振りでUNIVAS(大学スポーツ協会)が設立されました。大学スポーツの価値を最大化し、文武両道(デュアルキャリア)を推進する目的です。これはアメリカのNCAA(全米大学体育協会)がお手本です。米国では学業と競技の両立が厳しく、GPA(成績)が基準に達しないと試合に出られないようなルールがあります。また、大学スポーツはビジネスとしても成功しています。
日本では各競技団体がすでにインカレなどの試合を運営していること、大学間で成績重視の考え方にバラつきがあることなどから、UNIVASの活動は当初の理念通りには進んでいません。しかし、方向性は正しく、帝京大学ラグビー部や青山学院大学駅伝部のような強豪チームは、デュアルキャリアの指導をしています。
161.スポーツ選手のキャリアを考える(1)アントラージュとは
私は現在、大学院で「スポーツ選手のライフキャリア」を研究しています。3月に修士論文を提出し、その成果を『キャリア・アントラージュ 社会で活躍するスポーツ選手の育て方』という書籍として出版することになりました。今月は、その書籍の内容を抜粋してお話します。
「アントラージュ」とは、フランス語で「周囲を取り巻く人たち」という意味です。国際オリンピック委員会(IOC)が提唱し、日本のスポーツ界も賛同しています。スポーツ選手は子どもの頃から、競技偏重になりがちで、引退後の生活に困ることが起こりがちです。そうならないように、親、指導者、競技関係者など、選手を取り巻く人たちが、「競技は人生の一部である」という「デュアルキャリア」を意識する必要があります。
160.ヨーロッパに学ぶ(13)イソップ童話とギリシャ哲学に学ぶ
イソップ童話は、紀元前6世紀のギリシャで生まれました。日本には江戸時代初期に伝えられたと言われます。ウサギと亀、アリとキリギリスなど、どの話も人生への教訓があります。2500年前も今も、人間社会の真理はあまり変わらないことが興味深いです。
今回は、「酸っぱいブドウ」「カラスと水差し」「よくばりのイヌ」「田舎のネズミと町のネズミ」の4つについて考察します。また、ギリシャ哲学の祖である、ソクラテスの「無知の知」、プラトンの「洞窟の比喩」などの言葉も、現在に生きる私たちに参考になります。
159.ヨーロッパに学ぶ(12)ギリシャ社会からの示唆
ギリシャは紀元前2000年頃から文明が発達し、特に紀元前5世紀が黄金期でした。哲学、政治学、医学、科学など、多くの領域で、西洋文明の源流です。現在は人口3300万人で観光業が主体の、欧州でも経済的に劣る国になっています。夜遅くまで食事をするなど、人生を楽しむ姿勢の裏には、国家や社会へのあきらめ(悟り)があります。
産業では、観光業がGDPの20%を支える圧倒的な中核です。あとは農業と海運程度しかありません。そのため、ITエンジニアや医師のような技術をもつ若者は、ドイツや英国に流出してしまいます。フリーランスや自営の人が多く、これからの日本にも参考になるキャリア観だと思います。
158.ヨーロッパに学ぶ(11)イタリアはなぜ幸せに暮らせるのか
イタリアは失業率も物価も髙く、生活が厳しい人もいるはずですが、多くのイタリア人は陽気で幸せそうです。作家の塩野七生さんは、イタリア人は「人は完全ではないことを前提に生きる」ため、うまくいかなくても「まあ、そんなものだ」と受け止める余裕があると言います。
イタリア人は、かつては世界一のローマ帝国であったことから、「今は一番でなくてもよい」という感覚をもっているそうです。また、歴史的に国家や政治は不安定なので、「国家や会社に期待しすぎない」「仕事は人生の一部であり、人生そのものではない」「家族、食事、余暇が仕事より明確に上位」という価値観です。成熟国の日本に生きる私たちにも、示唆が多いと思います。
157.ヨーロッパに学ぶ(10)イタリアの産業の強み
「ヨーロッパに学ぶ」シリーズの続編です。84-89回、137-139回では、ドイツ、イギリス、フランスなど7カ国をとりあげました。今月の4回はイタリアとギリシャです。今回はイタリアの概要と産業の特徴、そこから日本人が学べそうなことをお話します。イタリアに詳しい、漫画家のヤマザキマリさんのコメントも紹介します。
イタリアの主な産業は、ファッション、自動車、機械、食品、観光です。企業の9割が中小企業で、地域ごとに得意な産業があります。Gucci,Pradaなどのファッションブランドに代表されるように、高品質な製品を生む職人的な強みがあります。キャリア意識としては、仕事のための人生ではなく、どの会社に勤めるかより、何ができるかが大切な価値観です。
156.イクボス研修(3)部下力の向上
イクボス研修の3回目は、部下力の向上です。部下は、仕事と私生活の両立を望むなら、「自責型」の社員になる必要があります。権利主張型・ぶら下がり型の部下ではなく、まず自分の職責を果たす意識をもつことが重要です。
特に若い時期には、「仕事の基礎体力」をつけて、上司や周囲からの「信頼残高」を増やす努力をしないといけません。イクボスは、そのことに気づかない若手には、教えてあげる必要があります。スポーツに例えると、チームの一員として認められるには基礎体力が必要なことは理解できると思います。
働き方改革は、誰かから与えられるものではなく、自ら行動して取りにいくものです。実行を続けるモチベーションは、「人生をもっと欲張る貪欲さ」かもしれません。働き方改革は、「生き方改革」なのです。
155.イクボス研修(2)組織力の向上
働き方改革やワークライフバランスを進めると組織の成果が下がるのではないか、と心配する声がよくあります。しかし、イクボスが次のようなマネジメントをできれば、むしろ成果は向上します。ポイントは、部下の仕事力向上、チームワークの向上、コミュニケーションの活性化の3つです。
部下にはできるだけ裁量権を与え、任せることで、仕事への責任感を高めます。上司はプレイよりマネージに時間を使えるようになる好循環になります。また、誰もが働く上での制約があるという前提で、属人化を回避し、効率化を図ることで「助け合うチーム」になります。
チーム内に心理的安全性が確保され、コミュニケーションが増えると、お互いに要望を伝えやすくなり、「お互い様精神」が発揮しやすくなります。
154.イクボス研修(1)イクボスとは何か
私が所属するNPOファザーリングジャパンでは、10年以上前から、「イクボス」を提唱しています。イクボスとは、①部下の私生活と仕事をともに応援する、②自らもワーク(仕事)・ライフ(私生活)・ソーシャル(社会活動)を楽しむ、③組織の目標達成に強い責任感をもつ、という管理職です。
一般的なワークライフバランスや働き方改革の議論では、②と③の視点が抜け落ちていることが多くあります。①は当然として、②では、上司自身も、自分や家族を大切にして、自己研鑽・ボランティア・社会活動などでイキイキと人生を楽しむ姿勢が大切です。
また③では、仕事への厳しさと優しさを兼ね備えた上司として、目標達成に強くこだわる組織にしていく責任感をもつことが重要です。ワークライフバランスは、単にヌルくて緩いものではないのです。
153.2026年に就職・転職におススメの業界
2026年に就職・転職を考えている方におススメの業界を紹介します。ChatGPTに相談して、募集ポジションが多い業界を選んでいます。
おススメ業界は、ソフトウェア・IT・デジタル化推進、人材育成・リスキリング・教育DX、医療・ヘルスケア(非医療職)、観光・マーケティング、サステイナビリティ・脱炭素の5つです。これらの業界は成長しているので募集が多く、入社時に専門性がなくても入りやすいという共通点があります。
どの仕事でも、入門レベルでよいので、ITリテラシー、AIリテラシー、データ理解力、プロジェクトマネジメント力、英語力が身についていると、その後のキャリアにつながりやすいでしょう。
152. 2025年のキャリア10大トピックス(2)働き方改革の進展、就活早期化など
今年の10大トピックスの後半です。今回は、働き方改革のさらなる進展、新卒大学生の就活早期化、スカウト型・逆求人型人材サービスの普及、地方移住・多拠点キャリアの増加、女性首相誕生による女性活躍の加速への期待、の5点です。
2019年から始まった働き方改革の「時間外労働規制」は、医師、運送業、建設業では5年遅れて法的適用が開始され、今年ようやく、それぞれの業界で運用方法が決まってきました。他に、最後のブラック職場として、教員と上級国家公務員も話題になっています。
新卒大学生の就職については、3年生の秋までに内定をもらう学生が過去最高水準になりました。早期選考が当たり前になり、究極の売手市場といえるでしょう。
151.2025年のキャリア10大トピックス(1)生成AI、リスキリングなど
2025年もあと2回を残すだけとなりました。恒例の10大トピックスの前半です。今回は、生成AIの活用、リスキリングの本格拡大、副業・兼業の一般化、30~50代の転職急増、ジョブ型雇用の拡大の5点です。
生成AIは日常業務の中で、誰にでも使えるものになってきました。ホワイトカラーの仕事の進め方を大きく変化させています。大学生のレポートも、見た目は上手になってきました。AIを活用できる人材しか生き残れない時代の入り口にいる印象です。
リスキリングについては、経済産業省が社会人リカレント学習人口を400万人規模にする方針を発表しました。私が所属する社会人研修会社へのお声がけも増えています。
150.高校生と親のための進路選択(2)英語力と異文化受容力
もし文系に進む場合は、英語力が無いと、面白い仕事はできないかもしれません。日本では人口減少により国内市場が縮小していくため、世界で戦える企業しか成長できないからです。例外は、IT系、医療系、観光業くらいでしょうか。
高校生には、まず大学受験の単語と文法は大事だよ、と話します。単語の暗記は退屈ですが、これを避けると英語ができるようにはならないからです。大学生になったら、TOEICを受けましょう。まずは多くの大手企業の足切り点と言われる600点が目標です。
英語と合わせて、異文化受容力も大切です。人種、宗教、嗜好など異なる価値観の人を受け入れて、仲間として協力し合える力です。そのためには、高校生の頃から、できるだけ多くの友達と関わる気持ちを持ちましょう。
149.高校生と親のための進路選択(1)理系?文系?
高校1年生の正月明けに、文系か理系かの進路選択をする学校が多いと思います。私は高校生向けのキャリア授業を行うNPO「16歳の仕事塾」に所属し、年数回、社会人講師として授業をしています。今回は、その授業からの抜粋です。
私の意見は、「迷ったら理系」です。これからの時代は、論理的思考など理系的な素養が必要です。特にSTEM(科学、技術、工学、数学)人材は圧倒的に不足しています。一方、文系ホワイトカラーの仕事は、一部の例外を除き、大幅に減っていきます。私自身もそうですが、理系から文系に変わるのは容易ですが、逆は難しいです。
大学より、専門学校や高専で、技術やスキルを身につける方が、職業的ニーズはあるかもしれません。看護・医療系、電気工事技師や配管工などの職人系は将来性が高いです。米国では、「ブルーカラー・ビリオネア」(高額所得職人)という言葉もできています。
148.ミドル・シニアのキャリアデザイン(4) 転機に対処するには
弊著『40歳からの実践的キャリアデザイン』からの抜粋の4回目です。今回は、中高年が転機に対処するための方法論をお伝えします。著名なキャリア研究者であるナンシー・シュロスバーグは、「人生は転機の連続」ととらえ、転機を乗り越えるための4つのSを提唱しました。
4Sとは、状況(Situation)、自己(Self)、支援(Support)、戦略(Strategies)です。転機に際しては、まず状況を客観的に把握し、自己の強み・価値観などを理解し、家族や友人の支援を受けることで心理的安定を保ち、転機に対処する戦略を練る、という意味です。この4Sは、ミドル・シニアのキャリア再設計にはとても有効です。
147.ミドル・シニアのキャリアデザイン(3) キャリア再構築の心構え
今回は、中高年のキャリアを再構築するための精神的基盤(メンタルファウンデーション)とモチベーションについてお話します。まず、健康、家族、経済の3Kが大切です。次に、自己効力感を高める必要があります。
自己効力感とは、「自分はできる」という信念で、挑戦意欲、行動力の源泉です。中高年になると、役職喪失、技術変化、健康不安などにより自己効力感が低下しやすいため、意識的な維持が重要です。また、ブルームの期待理論に基づき、外的報酬よりも自分の内的報酬を確認することが、この時期のキャリアデザインでは核になります。
146.ミドル・シニアのキャリアデザイン(2) エンプロイアビリティを高めるには
雇用される力をエンプロイアビリティと呼びます。中高年になり、若い頃に獲得したスキルが陳腐化すると、エンプロイアビリティが低下していきます。時代にあったスキルを意識的に身につけないと、「社外でも通用する力=市場価値」は維持できません。
そのためにはまず、キャリアアンカー(キャリアの軸)を再設計し、組織に依存するのではない人生観、すなわち「キャリア自律」の基盤をつくる必要があります。また、専門性の再定義、リスキリング(学び直し)、社外ネットワークの構築、パラレルキャリア(副業、地域活動など)の実践、学び続ける姿勢、の5点が大切です。
145.ミドル・シニアのキャリアデザイン(1) 中年の危機を乗り越えるには
今月は弊著『40歳からの実践的キャリアデザイン』(中央経済社)からの抜粋をお話します。著名な心理学者のユングは、40-45歳を「人生の正午」と捉え、その頃に「中年の危機」が訪れると警鐘を鳴らしました。仕事の悩み、体力低下、家庭の変化などが起こりがちで、「自分の人生はこのままでよいのだろうか」と落ち込む人が多いのです。
中年の危機を乗り越えるには、「自分らしさとは何か」を考え、社会的地位・収入などの外的キャリアよりも、充実感や満足感などの内的キャリアを追求する必要があります。自分は人生の午後(後半)に「どうありたいか」「どう生きていきたいか」を考え、真の自己を確立することが重要なのです。
144.採用のトレンド(5)アスリート採用
最近は、大学の体育会などでスポーツをやっている「アスリート学生」を対象にした就職支援サービスが増えています。アスリート学生は、対人マナー、成長意欲、粘り強さ、チームワークなどが鍛えられているため、採用したい企業は多数あります。
一方、体育会学生は、練習や試合に忙しく、就職活動にあまり時間をかけられません。面倒な就活は、4年秋に部活が終わってから考えればいいやと、後回しにする学生も大勢います。
アスナビ、スポナビなどの就活エージェントは、学生が就活と競技を両立できるよう、効率的な就活を支援しています。また、スポーツ庁ではアスリート向けのキャリア支援の専門家を育成しています
143.採用のトレンド(4)スカウト型採用
企業側から採用したい人に直接アプローチする方法をスカウト型(オファー型)とよびます。サイト上に自分のプロフィールとやりたい仕事を書いておくと、企業から「ウチの説明会に来ませんか?」とメールがくる仕組みです。
元々は専門的な経験がある中途採用が対象でしたが、最近は新卒学生にも普及してきました。自分の価値を見つけてもらえる、知らない業界・企業と出会える、選考スピードが早い、といったメリットがあります。ただし、自分がやりたいことが明確でないと、どの企業からも声がかからない、興味の低い会社ばかりから連絡がくる、ということも起こります。